使ったものを美しくしまう、というのは、古くから日本人の精神的な美のあり方です。
外国人が日本人の生活について質問するという番組があり、「日本人はどうして毎日お布団をたたんで、押入れにしまうのですか?」と質問がありました。ベッドで眠る外国人にとって、「お布団を毎日たたんでしまう」という事が理解しにくい、というのです。もちろん、狭い日本の住宅事情によるということもあるでしょう。しかしもう一つの解答に外国の方々は大いに納得していました。それが冒頭の言葉でした。
着物もそうだ、と思います。着物を白いたとう紙の上で一回一回丁寧にたたみ、両手で持ち上げ、タンスにしまうと私達はなぜか、心が清められた感じがします。美しくしまうことも、生活する心を豊かにする事なのです。
とは言っても、「お布団と違って、着物って収納が大変でしょう」と難しく考えている方も多いはず。
今回は、着物を上手に収納して、買い取りをしてもらう時にも、「わあ、上手に収納なさってたんですね!」とお店の人をビックリさせるコツ、お教えします。
「上手な着物の収納」とは、「しまいこまない収納」だと思うのです。「滅多に着ないから」と言って押入れの天袋にしまいこんでしまったり、箱型のプラスチックケースを重ねた下の方になってしまったり・・・。これでは出す時に面倒、あるいは忘れてしまって、収納というよりも捨ててしまっている状態。
上手に収納することは、着物を着る機会を増やせるようにすることです。たとえば、プラスティックの収納ケースの場合でも、引き出し式で着物が二つ折りで入るサイズのものがよいでしょう。また、透明なものであれば、中身が見えいつでも取り出すことが出来ます。腰の高さの引き出しには、今の季節の着物を。上の方には、その他の季節の着物を。季節が変われば、引き出しごとかえることができます。
帯締め、帯上げ、半襟、髪飾りなどの小物も季節ごとにまとめておくと、出した時に「アレがない、コレがない」ということが防げますよ。(※ 帯じめは、房の部分が乱れないように注意しましょう。上等なものは、房の部分を和紙で巻いておきましょう)
また保管の際は、絹製品の変色の原因になるため、ウール製の腰紐、ゴム製のコーリンベルトなどは、絹製品と一緒にしまわない様にしましょう。
プラスチックケースではなくタンスが欲しい人は、もちろん、桐の和タンスを購入するのが、一番適しています。でも、お値段が高いし、和ダンスが部屋の雰囲気と合わない・・・というなら、モダンなチェストを着物用に使ってもみてはどうでしょう。オシャレなチェストだと、フローリングのマンションでも違和感がありませんね。
本によっては、着物を入れる引き出しの順番が書かれていますが、自分の使いやすさを優先すればよいと思います。次に使う時、心地よく使えるために収納することが、上手な収納方法です。
一つ一つは丁寧に収納していても、素材を考えずに収納したり、収納場所の位置関係が不適切であったばかりに、せっかくのお着物が変色してしまったりします。又、適宜な虫干しも必要です。
着物は作り手・職人が様々な工夫を凝らして作り上げた繊細な衣裳でもあります。
私達はその着物を季節に合わせて着用し、季節が移ろうと、美しくしまってきました。
話は変わりますが、アメリカ人は家の手入れをこまめにします。それは、こまめに手入れをすることが、生活を豊かにするだけでなく、家を売買に出す時に高く売れる事を知っているからです。
流行に流されがちな現代ですが、着物と接することで、物を大切に扱うことが、手間をかけることが、上手に使いこなすことが、どんなに心豊かな生活であるかも、感じていただければと思います。
着物買い取りの場合でも、美しく収納されていた着物は、手間をかけた分、その値打ちにあった値段で買い取らせていただきます。どうぞ、上手な収納を心がけてみてください。