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落語「文七元結」に出てくる博打ばっかり打っていて働かない左官の長兵衛さん、娘が父親を助けるために吉原の大店に駆け込んだといって吉原のお店から迎えが来ます。
何もかも博打につぎ込んじゃって半纏一枚きりしか身につけるものがない長兵衛さん、嫌がる奥さんの着物を引っぺがして涼しい顔をしてお店へ出向きますが、「八つ口のある着物を着ているね」と、奥さんの着物を着てきたことがばれてしまいます。
このお話からも分かるように女性の着物には付いていて男性の着物には付いていないもの「身八つ口」。
ご存知のとおり脇の下に開いている縫っていない部分のことです。
ではなぜ男の着物にはなくて女の着物にはあるのでしょうか?
これについては諸説こもごもあって、これという決め手はないようです。
「風通しのため」という説もありますが、男の人だって夏は風通しがほしいのは同じでしょう。
何より男性は外出時必ず羽織を着ますが、女性が外出時に羽織を着るようになったのは明治以降のこと。むしろ女性のほうが冬の風通しを防ぎたい気持ちがあったのではないでしょうか?
これではますます身八つ口の存在理由が分からなくなるばかりですが、私はやはり「着くずれを直すため」というのが正解なんではないかと思います。
歌舞伎でも落語でも、女性を演じるときはしょっちゅう襟元に手をやってちまちまと直すしぐさをします。女性を象徴するしぐさとはこのように「着くずれを直す」しぐさなのではないでしょうか。
事ほど左様に着物を着ているときは洋服のときとは違ってあちこちを引っ張ったり、襟元を正したり、帯に手をやったり、ガラスのウインドーに映して確認したりとしょっちゅう自分の着姿がきちんとしているかどうかが気になります。洋服ではそんなに気になったりはしないのに不思議なものですね。
身八つ口から手を入れて下前の襟を引くと、喉元で衿を直すよりもきちんとしっかり直すことができますし、両手で身八つ口を持ってぐっと横に引けば背中のだぶつきを防ぐこともできます。
このように、身八つ口はおそらく女性側のニーズから発生したものというのが正解ではないでしょうか?
最後に冒頭にご紹介した落語「文七元結」は中村勘三郎丈主演でシネマ歌舞伎が劇場公開されます。どうぞおたのしみに!!
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